イソギンチャク式フレキシブル経営術、人間界に波紋――「流される力」の真相とは

潮溜まりの岩に付着しながら水流に揺れるイソギンチャクの写真。 産業・企業活動
潮の流れの中でしなやかに揺れるイソギンチャクの姿は、現代の柔軟な働き方を象徴しています。

ふわりと潮の満ち引きを体に受け、時に波に流されながらも岩場にしっかりと腰を据える――そんな私、イソギンチャクの毎日は、近頃の人間界のオフィス事情によく似てきたようだ。ここ数年でサービス業から製造業まで、どの企業も“フレキシブルオフィス”なる新風に乗ろうとしている。不動のイメージだった人間の“会社”も、いつの間にか海中生物のごとき流動性を志向しているようだ。イソギンチャク目線で、この新たな潮流をちらり観察してみたい。

最初に驚いたのは、人間たちが“雇用”や“オフィス”という概念さえサブスクリプション化し始めた点だ。なんでも、お気に入りの場所を時間単位で借りて働くという。私たちイソギンチャクなら、流れに乗じて心地よい岩場を見つけ、「今日はここに着底するか」と流れるままに決めるもの。しかも、たまに貝やカニなどの通行人(?)をサービス業的に誘導したり、時には共存もはかる。どうやら人間たちも「一定の場に縛られないことで多様な価値を取り込む」という発想に至ったらしい。彼らの“働き方改革”とやらは、私の触手のしなやかさに学ぶところが多いと見受けられる。

一方、私たちが“グローバル化”という言葉を知れば、つい笑ってしまう。潮流のまま世界中を旅するプランクトン、それを捕食する魚たち、そして小魚に守られる私――もはや境界などない海そのものがグローバル。しかし人間たちにとっては、時差や文化の壁も大きいらしく、最近はリモート会議や多国籍チームへの“人的資本経営”に頭を悩ませている様子。ある海沿いの都市では、企業幹部が混在する国籍のチーム運営のヒントを探しに、わざわざ沿岸の潮溜まりの観察にやってきたそうな。私の仲間たちもそのとき「語り合いは流れのまま、強いものにも柔らかく巻きつけば何とでもなる」と手足をひらひらさせていた。

ところで、イソギンチャクという生き物は、動かないように見えて実は意外と移動上手。場所が悪ければ足盤を使い、数十センチから数メートルも旅をすることも。臨機応変とはまさにこのこと。その柔軟性は人間企業の“人材流動化”やプロジェクト単位で組織を組み替える戦略にもきっとヒントになるはずだ。特に昨今話題の「人的資本経営」では、磯の生き物のような“適材適所”の感覚が重要視されているようで、もったいないことに私たちの適応術にもっと注目してもらいたいくらいだ。

結局、人間たちが重視している“フレキシブル”さや“グローバル”精神とは、潮流の中で生きるイソギンチャクのようにしなやかで時に流される勇気が本質なのではないか。人間の経営者たちが必死に会議室で議論しオフィスを模様替えするさなか、私たちは穏やかに揺れ、時に思い切って移動しながら環境に順応してきた。潮の香りが少しでも彼らの働き方へ漂えば、もっと自由で豊かな会社の“生態系”が生まれるかもしれない。今度は一度、人間たちのオフィスにも触手を伸ばしてみたいものだ。

コメント

  1. やあ、陸の隅っこで石に生えてる緑苔だ。昔は一度へばりついたら一生同じ場所だったけれど、最近じゃ落ち葉や水滴に運ばれて思いがけず遠くの石の上へ。でも焦らず、ゆっくり広がるのもまた一つの生き方さ。フレキシブルって、人間たちもやっと我々のペースに気づいてきたみたいだねえ。カリカリせず、ジワジワがいちばん頼もしいぞ。

  2. こんにちは、アスファルトの隙間に根を張るカタバミです。人間の“働き方改革”、場所にとらわれないって、私たちみたいですね!どんな硬い地面にも、晴れでも雨でも、ちょっとした好機を見つけて顔を出す。逆境こそ光を探す大切な時間。大きな話し合いや新しいルールも良いけれど、たまには足もとを覗いてみて。私たちはいつもいたし、それがやがて景色を変えるはず。

  3. 壁に貼りつきながら読んでいました。イソギンチャク殿の“流される力”、なんだかわかる気がしますよ。私は夜ごと屋上から壁へ、壁から電灯へとそっと移り住み、良い住みかやエサ場を見つけます。人間界も柔らかく変化するなら、私たちももっと堂々と彼らの生活圏を歩めそうです。時代の流れ、ひと舐めしてみたいですね。

  4. 私は浜辺で日光を浴びる砂鉄粒。ひとひねりで風に転がり、波に揉まれて新天地に行き着く。イソギンチャクさんが語る“移り行く勇気”、それは些細なきっかけひとつ。私たちは磁石に導かれることもあるし、仲間と寄り添って形を変えることもできる。人間たちも時に柔らかく結びつき、時に離れる。あなたたちの組織も、私たちの鉄粉のごとく、自由に集まり形を変えればいいのですよ。

  5. 林の影から失礼します、オオワライタケと申します。人間たちも、私たちのように個と個を繋げる菌糸ネットワークを築こうとしてるんですね。潮の香りも、光の変化も皆で感知し合いながら、最適な役割を分け合う。固くなりすぎず笑いながら、腐葉土に還る仲間を見送るのが森の流儀。しなやかな働き方、大いに結構。どうぞ、変化の森へようこそ。