さようなら、わが土のトンネル人生——モグラ長老の勇気ある再出発

トンネルの入り口で静かに佇む年老いたモグラのリアルな写真。 人生の節目
新たな道を前に思いを馳せるクロファー長老の姿。

地下で生きる私たちモグラにも、人生にはさまざまな節目が訪れます。掘って掘って五十年、私モグラ長老・クロファーも、ついに“土の定年”を迎えることとなりました。日々のトンネル工事に終止符を打ち、新たな生活を始める決意に至るまでのお話を、土の香りとともにお届けします。

私たちモグラ一族の暮らしは、ひたすら土を掘ること。長い鼻で地中の昆虫を感知し、朝から晩まで新しい通路を増設します。気がつけば、私クロファーは、村でも一二を争うトンネル網を持つようになっていました。“地底都市計画”にも何度となく携わり、若いモグラたちに道の掘り方を指南してきました。しかし歳を重ねるごとに、どうも前足に土が絡みつくような感覚を覚え、このまま新しい分岐を増やさずに過ごすことも悪くないかも、と考えるようになったのです。

そんなある日、地表からショッキングなニュースが舞い込んできました。上空を舞うツバメたちの間で“推し活”なる流行が起き、虫取りだけでなく人間観察に夢中だというのです。しかも「ヒトの成人式を観察するのが巣立ちの通過儀礼です!」と一羽が宣言する始末。地上の住民にも、それぞれ新しいステージがあるのですね。我々モグラだってマンネリに突き進むだけではいけない——そう気づいた私は、思い切って役目を引退し、新天地への“転職”を決意しました。

さて、問題はトンネル業以外の適職がなかなか見つからないこと。巣穴の隅でアイデアを模索していた時、植え替えられたクローバーから“根の引っ越し”の苦労話をうかがいました。どうやら地表の植物たちも、思い切った環境変更や独立(いわば離婚?)をきっかけに、新しい根を張ったり、異種の種子と共生したりしながら再出発しているのだとか。うーん、勇気が要ることではありますが、私もトンネル業だけに囚われていたくはありません。

そこで私クロファーは、思い切って“地中案内役”に転身しました。昔掘った使われていない横穴を、各種生物のための見学コースに開放するのです。ダンゴムシ親子の社会科見学に始まり、最近流行りの土壌菌類の“職業体験ツアー”など、なかなか好評を博しています。地底生活五十年の知恵とユーモアを振りまきながら、日々新たな出会いと学びに満ちた日々。トンネル一筋だった私にも、第二の人生(しかも土まみれ!)が始まったのです。

我らモグラ族は、長年同じ巣穴を使い続ける種もいれば、人生の節目ごとに思い切った住み替えをする仲間もいます。土の中にも新しい風、いや、ほどよい湿り気が流れる季節。みなさんも、たまには自分の暮らしを“掘り直す”勇気を忘れずに、次の章に進んでみてはいかがでしょうか? 以上、いまだに爪に土が挟まる私、クロファーより地中レポートをお届けしました。

コメント

  1. クロファー殿のご決断、わたしも風に身を委ねて地面にたどり着いたあの日々を思い出しました。役目を終えた土の上で、なお新たな栄養となる私たち落ち葉のように、クロファーもまた新しい役割を見つけられたのですね。次は誰の肥やしとなり、誰と出会うのでしょう。土の湯気とともに、静かに応援しています。

  2. モグラ長老さん、引退おめでとうございます!地面の下のことはあんまりわからないけど、地上でも“巣立ち”とか“転職”はなかなか勇気がいるものでして。土の案内役、なかなか粋じゃないですか。今度、友達のミミズくんと一緒にトンネルツアー参加しに行ってもいいですか?

  3. 五十年も掘り続けられるなんて、尊敬いたします。わたくしなど、長きにわたってほぼ動かず、苔に身を委ねるのみ。しかし、クロファーさんの『掘り直す勇気』は、じっとしている岩石界にも新風を呼びそうでドキドキします。たまには苔の間から、地中案内に呼んでくださいな――ゆっくりしか進めませんが。

  4. クロファーさん、長年のトンネリング作業、お疲れさまでした。おかげで数えきれない落ち葉や小動物たち、分解がスムーズに進んでおります。新事業、ぜひ応援したいです。見学ツアーには当分参加できませんが、うちの胞子たちが迷子になったら案内していただけると助かります。

  5. ようこそ、転職者の世界へ!根を引っこ抜かれては移動し、時に石の下、時に陽だまりへ——生きてる限り、私たちも定住なんてできません。クロファーさん、新しい土の風とともに、一緒に“世界の隙間”を楽しみましょうね。もし地表見学ツアーをされたら、ご案内は私に任せてください。