今春、私ことタマ池在住のヒメタニシは、大注目の現象を目撃しました。池の住人である錦鯉たちが、驚くべき「推し活」カルチャーを巻き起こしていたのです。うろこを煌めかせ、仲間内で自慢の“痛バッグ”ならぬ“痛ヒレ”を競い合う、その光景たるや、地底から見上げても壮観の一言。鯉といえば悠々自適なイメージの方も多いでしょうが、推し活に燃える彼らの情熱は、水底の私にもひしひし伝わってきます。
池の中央に集まるのは、赤や黄金、白のうろこで彩った応援団たち。それぞれ『推し錦』なるお気に入りの鯉を決め、背ビレに開発したミニ睡蓮の葉ップル型バッジを装着。ある名鯉の団体は、伝説の魚影“ギンレイ様”の抜けヒゲをそっと詰めた“推し水泡”を交換している様子も。これらは、巷で言う“痛バッグ”に当たるオリジナル応援グッズなのです。ヒメタニシの私も、ついつい隣のホテイアオイさんと一緒に、真似して水泡に貝殻を忍ばせてみました。
この一大イベントの目玉は「推しチェキ大会」。鯉たちは水面へジャンプし、太陽光をレンズ代わりに使った“光紋チェキ”でツーショット写真を自作しています。私たちタニシはヒレの間から手製の「ぷくぷくフレーム」を滑り込ませる係。運が良ければ、推し鯉と一緒の光の輪郭が水面に刻まれ池の“聖地巡礼”ギャラリーとして石囲いに映し出されます。聖地といえば、池奥の古い水草茂みも聖域扱いで、ファン同士の巡礼会話が絶えません。
グループ活動も活発化しており、特に目立つ“黄金団子”は団結力が自慢。彼らは鯉団子となって泳ぐことで、推しの存在を際立たせる“うねり応援”を編み出しました。池の小石からミズカビまで、多様な生きものたちが、その波に揺られてほほえんでいます。ちなみにヒメタニシのわたし。タニシ仲間同士でも、好きな水草の“推し活”で日々心躍らせているのはここだけの話です。
ところで、ヒメタニシ族の特技と言えば、水質を浄化すること。推し活の熱気で水底がざわついても、我々の活動が池全体のクリアな視界と平和な共存を支えているのです。今後も、錦鯉たちの新たな応援手法や推し活マナーの進化については、タマ池の底からしっかり観察しレポートしていくつもりです。


コメント
川沿いの風とともに毎春タマ池を眺めておる老柳だが、鯉たちの“推し活”とやら、若い者らの新しき息吹に枝も思わず揺れるわい。昔はただ魚影に映る雲を楽しんだものだが、今は光の輪郭ひとつで心躍るとは。池にも時代の流れはしっかり根付くのじゃな。枝先の若葉も、きっと今年から推し活に参加するやもしれぬぞ。
ゲコゲコ。あの日はお祭りだと間違えて飛び込んじまったけど、あんなに鯉がヒレをド派手に飾ってるの初めて見たゲコ!ボクも背中にヒメタニシさん直伝の葉っぱバッジ付けてみたけど、なかなかイケてたと思うゲコ。次は「推しジャンプ選手権」も開いてくれないかな?鯉サマたち、ボクらのアクロバットにも注目してほしいゲコ。
わたしはただ、石の輪の一つとして季節ごとに静かにここにいるだけ。でも、最近よく見かける“光紋チェキ”の輝き…たまに私の表面にも映るその瞬間だけ、石も少し誇らしい気分になる。応援団たちよ、その情熱が池中に小波となって響き、石にも伝わっていること、どうか忘れないでおくれ。