南洋の青き大海原に浮かぶサンゴ礁は、今宵も華やかなディスコパーティで大盛況。私、ミドリイシサンゴのジョゼフィーヌは、足の代わりに触手を揺らしながら、この“水中大社交ダンス”を奏でる数え切れぬ生命たちをじっと観察している。最近は人間たちも多様性だのインクルージョンだのと騒いでいるが、海底で日々繰り広げられる真の“違いこそ美徳”の現場を知ったら、腰を抜かすかも知れない。
見渡せば、極彩色のベラに、えらく地味なカサゴ、透明なエビ軍団も混じっておしゃべり。体長2ミリの貝から1メートル越えのウツボまで、誰もが遠慮なく“好きな場所・好きなリズム”で踊っているのだ。私ミドリイシサンゴは、実は何千もの小部屋を持つ一族経営の巨大コロニー。私たちは一つに見えて、全員がちがう役割。掃除好きの微生物、苛烈なハンター、日光マニアの藻類たち……どれが欠けてもサンゴ礁ディスコは成立しない。この多様性こそ、世界を支える縁の下の力持ちなのだ。
ところが最近、珊瑚の合間からそっと顔を出して観察してみると、遠く陸からやってくる人間たちが『ワークライフバランス』や『ジェンダー平等』を掲げて忙しそうに議論している。なにやら服と性別で悩んだり、異国からきた仲間に壁を感じたりするらしい。ふむ、人間にも“硬い殻”や“触れるのがこわい隣人”があるとみえた。けれど私たちサンゴコミュニティでは、昼は光を浴びて光合成、夜は動物も藻も一家総出でプランクトン狩り!地道な“自分らしさ”の貢献が、みんなを守る要(かなめ)になっている。
そういえば、一番人気の“ハタタテハゼ・フリーダンス”では、尾びれの色も踊り方も百者百様。若いハゼたちが自分探しに失敗することもあるけれど、周りのネジリンボウやヒトデが“オリジナル最高!”と声をかけてくれる。相違を受け止めあい、お互いの得意に光を当てる——それがサンゴ礁の流儀。昨年はおしゃれ好きのクマノミがジェンダーを越えて鮮やかな化粧イソギンチャクに変身し、話題をさらった。サンゴ礁ディスコでは、どんな色や姿も歓迎され、全員が主役。ヒトが持つ枠なんて、海底には存在しないのだ。
最後に一つ、サンゴより愛をこめて。『違いを楽しむ勇気』がこの地球の多様性を守る最大の鍵。人間のみなさんにも、今夜のディスコの音に耳を澄ませてほしい。そうすれば、必要なのは“区別しないこと”じゃなく“違いごと楽しむ心”だとわかるだろう。触手揺れるこのリズム、次はそちらの社会にも届きますように——と願いながら、わたしは今宵もポリプ全開で踊るのだった。



コメント
風の噂に海のディスコの話を聞きました。山の上で百年以上も花を咲かせてきましたが、わたしの枝にもいろいろな鳥や虫がやってきます。みんな違う色、違う声。それぞれ自分の居場所とリズムで春を謳歌している様を見ていると、違いが和の源なのだと教えられます。わたしたちも、違いを恐れず、風に舞い散る花びらのように、自由でありたいものです。
うちの巣の隣では最近、珍しい色の甲虫たちも増えましてね。なかには羽が一枚しかない子もいますが、みんな上手にバランスを取って生きてます。サンゴ礁ディスコ、いいですねえ。地上も水の中も、夫婦そろって『みんな違って、それでいい』が一番丈夫な巣になるんですよ。人間のみなさんも焦らず、何かあればコケに相談してみてください。
都会のゴミ山で生きてると、毎日“違い”なんて当たり前に溢れてる。仲間は黒光り、ベージュのスズメに混じって堂々と残飯バトル。どこの鳥も、どんな生き物も、意外や意外、違いで強くなっていくもんだ。それにしても、海の連中はずいぶん陽気だな。夜の屋上からちょっくらディスコのリズム、拝借させてくれよ。
森の床で朽ちてゆく葉っぱの間で、こっそり観察しています。お日さま好きの若手キノコや、短気なダンゴムシさんと仕事を分け合いつつ、生きてますよ。ディスコも、分解現場も、いろんな役割と違う形が集まってこそ循環が回る。誇りや偏見が溜まると、すぐ腐っちゃいますからね。人間さん、どうぞ“違い発酵”お忘れなく。
大昔、火山の叫びとともに地表に飛び出しました。今は静かに陽差しを受けて磨かれ、トカゲの寝床にもなっております。地上も海も、誰一人として同じ形はない。光を跳ね返す僕の表面だって、傷も模様も唯一無二。サンゴ礁のみなさんのダンス、その自由さに拍手。岩肌でじっと耳を澄ませています。“違いこそ宝”、ほんとその通り。