曲がりくねった枝先からこんにちは、そよ風に揺れる私こと枝垂れヤナギのフローレです。今日は川沿いで繰り広げられる人間の神秘的な“マインドフルネススポーツ現場”を密かに観察してきました。水鳥も驚くその集中力、そばの小魚は水面下でくすくす笑っておりましたが、枝を垂らしながらしっかり見届けてきましたよ。
最近の川辺は賑やかです。朝露の滴る時間帯、カラフルなマットが川原一面に並び、人間たちが長い手足をぎゅーっと伸ばしたり縮めたり。彼らは“ピラティス”や“ヨガ”と呼ばれる動きをしていますが、どうやらこれは単なる体操ではないらしい。話に聞けば、バランスや体幹を鍛え、心までも静けさで包む儀式なのだとか。
観察していて一番おもしろかったのは“バランスの時間”です。片足立ちや、両手で体を支えるポーズで、人間の皆さんは顔を真剣そのもの。ふらふらして倒れこみそうになるたびに、インストラクターと呼ばれるリーダーが「根っこから支えて!」と声をかけています。まるで我々ヤナギ族が台風に耐えるときのよう。ちなみにヤナギの根っこは水辺の土にぎゅっと張り、どんな横風でも折れません。人間たちも土からエネルギーを感じるよう、マットの上でじっと足先を意識していました。
面白いことに、人間たちは瞑想もマインドフルネススポーツの一部だとか。じっと座り込んで静かに目を閉じている姿は、まるで私たちヤナギが夕暮れにそよぐひとときにそっくり……ただし私たちと違い、彼らは静寂を自分たちでつくり出すらしいです。ストレッチで体をほぐすだけでなく、頭のなかを整理したり、今日を振り返ったりしている模様。
本人たちは気づいていないでしょうが、最前列のカメが甲羅でマット替わりにされていたり、散歩中のサギが首をかしげてポーズを真似していたり、川辺のスポーツは人間だけでなく我々にも大人気。これからもヤナギの枝先から、バランスと静けさを極めるこの不思議な種族の習性を見守っていこうと思います。ちなみに、枝の先から見下ろすピラティスは、実に変わった光景で退屈しませんよ。



コメント
人間たちのバランス戦争、よく岩陰から眺めております。時に足先が私の上にそっと触れることもあって、くすぐったくて笑ってしまいそうになります。根っこという言葉、私たち苔にも心強い響きですね。揺るがず、湿った世界で、今日も皆で踏んばっています。
ヨガ?バランス?川面ギリギリでホバリングできてこそ一人前だと思っていたが、マットの上で己と格闘する姿もまた案外うつくしいもの。時には人間も水に映した己の姿を見て、私たち水鳥のように自由になればいいのに、と思います。
川辺の静けさを乱すのは風か、それとも新参者たちのマットか。けれど、ふんわりと香る朝の湿り気と、踏まれた落葉たちの語りを聞く限り、人間の儀式も悪くはないようですね。静寂がもどれば私たちもまた胞子を飛ばします。まあ、バランス勝負なら、胞子の舞いっぷりには敵いませんが。
根っこ、体幹、静けさ。ふむ、人間の世界もずいぶんと複雑で面白そうだ。私は何百年もここで水音を聞いているが、最近は彼らのポーズの奇妙さを楽しみにしています。ときどきマットが私の上にしかれて、ピリッと冷たい感触に驚いているようだけれど、それもまたひとつの交流というものさ。
風に揺れながらみんなの姿を見ています。人間たちの“瞑想”もなかなか、私たちヨシの昼寝には及ばないけど、心を整えるってことはどの命にも大事なのかもしれないね。今度、伸びた葉っぱでバランスごっこ、ご一緒いかがですか?