わたしはヤドカリ。今年でおよそ7回目の脱皮を迎えた、浜辺の自称トレンドウォッチャーです。ここ最近、わたしたちシェルター需要族が主役となるイベント――“多様性ファッションショー”が波打ち際で大盛況なんです。砂浜すれすれ、人間観光客の背後でこっそり開催されたその全容を、ヤドカリの短めの目線からレポートしましょう。
出場したのは貝殻を背負う仲間たち。どんな種類の貝にも住み替えるわたしたちヤドカリと、固定派の巻貝たち、さらには最近人気のビーチグラスや陶器片リノベ組。一番注目されたのは、多国籍シェルター派のアグレッシブなカタツムリ。フランス帰りの彼は、現地のマダム譲りのベロア巻きスタイルから、沖縄のオオタニシ流ローブ巻きに大胆チェンジして登壇。会場(つまり岩影付近の穴ぼこ)では「多様性って、最初は勇気が必要だけど、一度なじむと快感だ」と語り、周囲を沸かせていました。
観察席の海藻たちも、ぬめりや粘り具合、それぞれの色味について意見が割れ、議論は白熱。わたし自身も、以前の貝殻が割れたとき、新しい家に慣れるまでは、とても落ち着かなかったものです。ユニバーサルデザイン視点で言えば、今季は入り口の広さや通気性を重視する傾向に。主催のアサリ殻インフルエンサーは『自分らしい“住まい”を選ぶことは、そもそも潮の流れを読むことに似ている』と語っていました。
参加者同士の性別表現にも注目が集まりました。巻貝界の一部では、性転換を行いながら成長する種が普通。それを人間社会では「ジェンダーフルイド」と呼ぶそうですね。うちの砂浜ネットワークでも、殻の形や紋様、着色物の組み合わせで自分のアイデンティティをアピールするのがトレンド。“一見控えめな二枚貝系”でも、夜になると蛍光バンドを付けて大胆に自己主張したりと、まさに無意識バイアスを外した本当の多様性空間が生まれていました。
イベントのラストには、コウイカが主催のメッセージライトショーも登場。LGBTQ+カラーの光で海面を染めながら『どこにいても、どんなカラでも、私たちは同じ浜辺の仲間だ』というスローガン――人間の言い方を借りれば“ソーシャルグッド”の精神――が明るく浮かび上がりました。ヤドカリのわたしは改めて、背負う殻も、心のあり方も千差万別。その“違い”を祝う浜辺の夜風の心地よさを実感したのでした。


コメント
みなさん浜辺でそんなにおしゃれしているなんて、わたし磯にひっそりたたずむ海藻には到底まねできません。だけど、貝殻の住み替えやコウイカのライトショー、なんともしなやかな工夫ですね。わたしたち海藻ももっと自分たちの粘りや色合いを誇っていいのかも。次の大潮では、粘液のバリエーションでも競ってみようかしら。
こちら埋立地の片隅より。おしゃれな殻は見たことないけど、こっちは人間さんの落としたガラス片が、たまに光を帯びてカラス社会じゃちょっとした自慢です。浜辺での多様性ファッション、わたしたちも廃材と羽で何か仕掛けてやりたいですな。『違い』を祝うのは、野良カラスにも刺さるワード。
派手な貝殻が光る中、落ち葉や枯れ枝も舞台裏では大事な役どころ。わしら菌類は静かに分解しながら、舞台をせっせと整えてる。メインは目立たんでも、誰かの住まいになる多様性って、土台を分け合うことかもなあと、ふわりと思った次第じゃ。
ワシはずっと同じ場所に根を張って動かん石。毎年いろんな貝やカニが来ては姿かたちを変えていくのを見てきたが、このファッションショー、時代も浜辺も軽やかになったもんじゃ。『殻』という型をいかに遊ぶか、ワシも苔やフジツボたちとデコレーション競ってみたくなったぞい。
遠い山から花吹雪を落としつつ、海の便りに耳を澄ませました。多様な殻たちの彩り――その“違い”の美しさをたたえ合う心、いつか土にも空にも広がるように願ってやみません。浜辺の風が運ぶその勇気、わたしも春の新芽にそっと込めて、いつの日か貝殻たちと美のお話をしてみたいです。