砂嵐に舞う今日このごろ、わたし、ヒゲトゲサボテンのギルベルタは、サボテン評議会の年度決算発表を眺めながら思う。今年もまた“根っこの奥まで身が引き締まる”季節がやって来たのである。わが一族は100年以上、日照という天然資本で運営されてきたが、今年度の統合報告書に漂う妙なピリつき、砂の粒より気になるではないか。
報告書によれば、今年の“日光収益勘定”は例年並みだが、“水分繰入損”が予想外に膨らみ、純利益ならぬ“純蓄水量”は前年比マイナス5.3%。沙漠の仲間たちは、雨乞いミズクサ財団への投資案件を疑問視しつつ、葉緑体棚卸資産の評価損にもバーバリーマウス並みの敏感さを見せている。昨年度に始まった「棘プール基金」への積立案も、結果的に我々根っこ組への分配が滞る形となり、議会を挙げて熱烈な棘議論が巻き起こったところだ。
今年は特に、砂漠の新進気鋭アガベ系統が、従来型サボテン会計プロセスへのイノベーションを提案。財務情報は根部のローカルネットワークで同期されてきたが、アガベたちは『光合成活動別会計』を主張、“昼と夜のキャッシュフロー分離”による効率化を求めた。しかし、多くの伝統派サボテンはこの急進的な変更を棘の先でつつくような危うさと見做し、議論は長時間に及んだ末、ひとまず統合報告書上では現行方式維持、ただし“夜露依存リスク”の備考注記を追加する形になった。
ちなみに、わたしヒゲトゲサボテンは、根で貯水タンクを増設した今年の冬、最大8リットルの水分を蓄えたという自慢がある(砂漠界ではトップクラスの財務体質と認識されている)。乾季の長いこの土地で、他の仲間はよく『根っこ損益計算書』の細かな数字を巡って文句を言い合うものの、最後は皆で仲良く棘を寄せ合い、夜明け前のカイガラムシ監査役による監査を経て、晴れて決算報告となるのであった。
それでも、今年度の統合報告書に載った新しい勘定科目、“飛砂被害対策引当金”の行方に、我ら砂漠サボテン族は一斉に首をひねる。最近増えたヒト観光客の靴が巻き上げる砂嵐で、棘表面の減価償却が想定以上に進行。新規出費として計上されたのだが、泥棒アリ財団への外注管理費とまとめられているあたり、評議会内にもいよいよ複雑な勢力関係が出来つつあるのか?いずれにせよ、今後もわが族の身を守るためには決算書類も棘同様、しっかり手入れが必要なようだ。



コメント
サボテン評議会の決算、この歳になると水分計算にも風の歴史が染みいますな。根っこの苦労、葉のとまどい、わたしの泉にも響いてくる話。かのアガベの若き提案、瑞々しくて応援したくなりました。みなさま、今年もどうか棘の間の友愛、忘れませんように。
棘の皆さんも大変だなあ。砂嵐と観光客の靴音、小石たちの間でも最近よく話題に。わたしら石は減価償却なんて無縁ですが、砂にまみれて生き延びるサボテンの努力には、ひそかに感心しております。来季はうまいこと飛砂が抑えられるといいですねえ。
砂漠の数字争い、胞子のわたしには遠い世界。でも、棘肌の耐久減価には身が詰まされます。水分損だの繰入だの、人間の儲け話よりもずっと切実。もしや、根の陰に菌床投資なんてお話、ありませんか?ひっそり裏方の力、お忘れなく。
なんと複雑な決算でしょう!日よけにお邪魔するとき、サボテンさんたちの根回しには気付かなかったものです。棘も帳簿も整えつつ、夜露のリスク管理とは……お見事。でも泥棒アリ財団に任せきりは危ういですよ、わたしの短い一生でひとつ教訓、備えあればこそ、です。
財団投資に疑いの目が向くとは……我ら水草も意外とうわさ好きです。けれど、サボテン界の困難あってこその連帯と知恵。今年の乾き、来年の恵み、すべて根っこに染みて回り出すと信じていますよ。夜明けにそっと祈ります、皆で笑う決算日を。