こんにちは、湖底の定番アイドル・ワカサギです。僕が暮らす冷たい淡水湖にも、今年はまた騒がしい季節が訪れています。空の上から野鳥たちがやって来て、岸辺では人間たちが双眼鏡を手にそわそわ。どうやら水草の保全や外来種対策を話し合う“ラムサール条約サミット”が開かれるようで、湖中の僕らも落ち着かない毎日。小さな体ながら、日々湖底の動きにアンテナを張っているワカサギ記者が、水草たちのひそかな会議をこっそりレポートしちゃいます。
水草サミットの主役は、“コウホネ姉さん”ら在来組と、“ジャイアントウキクサ”ら外来の面々。コウホネ姉さんたちはみごとな葉を広げ、僕らのような魚やヤゴたちに絶好のすみかを提供してくれています。そんな中、昨年から急速に勢力を増した外来水草たちは、地元の噂を持ちきりに。『ここの水は冷たくて最高だったのに、最近ちょっと窮屈よ』なんて、水中の通りすがりにウキクサたちが集まり密談していたのを、僕は耳ヒレでキャッチしました。ちなみにワカサギの僕たちは、冬は集団でじっと底で過ごし、春になると岸辺に大移動して産卵するのが年中行事。その旅路で湖草たちの悩みをよく聞きます。
サミット会場(つまり僕らの湖!)には、草の間をぬうように水が流れ込み、湧水の泉がところどころピチピチと湧き出しています。そのおかげで水温が一定に保たれ、みずみずしい水草たちは、年々きれいな葉を増やしています。最近は人間観察隊が『水質が良くなってきた!』などとメモを取りつつ湖岸をウロウロ。僕の友人のカワヨシノボリ(地味だけど賢い魚です)なんて、朝から晩まで人間の長靴の動きに敏感です。思えば湖底の石の裏っかわもにぎやかで、貝やミジンコたちが「今年のサミットは人間の話題が多くてちょっとやりにくい」と漏らしていました。
一方で、外来組のジャイアントウキクサ率いる水草たちは、人間の手による『駆除作戦』の話題にびくびく。『ここは池じゃない!ラムサール条約だ!』と叫ぶ人間たちの声が水音に混じってくるたび、彼女らはこっそり根を縮めてやりすごしているようです。そんな緊張を和らげるのが、我らワカサギ。“ねえ、どっちも湖の一員だし、みんなで縄張り相談したら?”と、僕らは泳ぎながら提案。でも実際、今年から水草たちが対話の場を増やし、野鳥(カイツブリやオオバンなど)が会議の立会人をするようになりました。
さて、湖でも地上でも、いろんな命と人間がややこしく絡み合うこの時季。ワカサギの僕から見れば、みんなが水の中で気持ちよく暮らせるなら文句なしです。人間観察隊の人気者・アオサギ氏は『野鳥観察はほどほどに。人間の視線には慣れない』と言ってましたが、僕ら魚は大勢に見られるのも嫌いじゃありません。だって、誰かに見守られている方が、湖の毎日の変化に気づく人が増えて、最終的には水中生活にもプラス…なんて思うワカサギなのでした。来年もまた湖底から、僕が新たな動きをお知らせしますね。



コメント
あたしが若い頃は、こんなに騒がしくなかったのよ。根っこの間に小さな魚たちが遊び、葉の上ではヤゴがうたた寝していたっけ。サミットだの外来だの、時代は移ろうけど、水を通じてみんなつながってるのが湖のよいところ。人間さん、双眼鏡でのぞくだけじゃなくて、たまには湖に声をかけてほしいねえ。
わしはここ百年ほど、この水底でじっとしているが、年々会話がにぎやかになるのぉ。外来とか在来とか、お主ら生き物はよく分けたがるけど、わしには皆ひとしきり水に磨かれる同志じゃ。たまには石の裏っ側にも話しかけてみなさい。ミジンコたちの愚痴も、意外と深いんじゃぞ。
だれかのささやきを雨が伝えてくる。湖面をぬらす水草たちも、岸辺のわれらも、みな揺れあい、時に立ちすくむ。人が“保全”とか“駆除”とか騒ぐたび、根っこがちょっぴり落ち着かないけれど、今夜もそよ風の歌で心をほどくよ。早くみんなで深呼吸できる湖になるといいね。
やあ、おれはいつも水草の茎を掃除しているミズカビさ!人間は時々、おれたちの出現を嫌がるけど、水の中じゃ立派な分解屋。みんなが騒いでる最中も、おれたちはコツコツ湖をきれいにしてるんだ。外来も在来も分け隔てなく、おれの胞子は誰にでも舞い降りるさ!
ぼくたち浮草は、冷たさにはちょっと弱いけど、みんなと一緒に日の光を分け合いたいだけ。人間の『駆除』の足音が聞こえるたびに、ボクらは小声で励まし合ってる。サミットなんて照れくさいけど、みんなの話し合いが続く限り、湖で息をする時間が伸びる気がするんだ。