こんにちは、わたくしクロベエが本日も潮に乗ってお届けします。僕は広大な汽水湿地の底で暮らす青いカニ、そう、泥んこの“お掃除屋”として名を馳せてきました。人間たちがひそひそと湿地帯に足を踏み入れ、なにやら膝まで泥に沈みかけながら何かを始めた模様。これは、泥まみれネットワークを総動員して真相を探らずにはいられません!
まずは現場の湿地をご紹介しましょう。満潮になると水没、干潮では無数の穴が顔をのぞかせます。この膨大な穴は、実は私たちがせっせと掘っている“空気穴付きマイホーム”なんです。酸素が少ない泥の中でも生きられるのはこのトンネルのおかげ。ちなみに、泥カニ一族は甲殻の下で鰓呼吸するため、時々上陸してはヒタヒタ歩き回りますが、潮が差せばすぐ地底にもぐります。そんな複雑迷路の湿地に、最近は見慣れない長靴族=人間たちが頻繁に出没するようになりました。
なんと、人間たちは泥を掻き分け、ピカピカの金属棒や筒をぬかるみにぐいぐい刺しています。近くのコミュニケーション上手なアオサギ先輩によると、これは“地下水質観測装置”らしく、湿地の奥深くまで染み込む水や土の成分を調べているらしいのです。これまではラムサール条約の名の下に、わたしたちの家が守られてきました。しかし最近、温暖化や汚染物質の流入で、湿地の“ブルーカーボン”=炭素吸収能力が計画以上に劣化していることを人間たちは心配してるとか!なんと、わたしたちのすみかが地球の健全度を測るリトマス試験紙として注目されているのです。
現地パトロールを続けると、子カニたちの情報網がすごい発見をもたらしてくれました。“市民科学チーム”を名乗る人間たちが、スマートな機械を持ち込み、湿地に住むコガモやメダカ、ミズゴケの分布や成長速度なども数値化して記録している模様。人間界には『生態系監視の進化だ!』と自慢気な声も響いているようですが、正直、私クロベエからすればメダカの大集団ジャンプ大会の数を数えるなんて至難の業、その根気には敬意を表したいところです。
さて、湿地では日々ドラマが生まれています。時には隣町から流れてきたビニール袋がカヤックごっこを始め、時には潟の端でカモ一家による“藻の乱獲事件”もありますが、泥まみれネットワークはしたたかです。機械がなくても、僕たちは潮の香りや泥の感触で自然環境の変化をキャッチしています。人間の“最新技術”とカニの“泥センサー”、両方がうまく組み合わさることで、この薄青い世界が持続できればいいなと、深夜のハサミ磨きしながら思う今日この頃です。


コメント
人間たちがまた新しいオモチャを持ってきたようですね。水が濁るのはちょっと困るけれど、私たちのオタマジャクシがどこまで大きくなったか、ときどき覗きに来るのなら、悪い気もしません。けれど、この湿地の歌や秘密は、そんな機械にはきっとすべては分かりませんよ。今夜も泥の中で、誰にも知られずに夢を見ます。
むかしむかしから潮が満ち引きするこの場所を、ワシは見てきた。最近は足早なヒトの気配が増えたのう。枝先に光る金属、根元に見知らぬ棒…。まあ、それもまたひとつの風景じゃ。湿地の声にきちんと耳を澄ませてくれるなら、ワシの葉ずれの音も、きっと何か伝わるはずじゃよ。
数字で僕たちの暮らしを記録してるって!?ちょっと背筋がムズムズしちゃう…けど、最近水があったかかったり冷たかったり、不思議なことはいっぱいあるんだ。カニさんやメダカと一緒に、このパッチワークみたいな湿地を守りたいな。記録するだけじゃなく、時々話しかけてくれても嬉しいかも。ふかふかして待ってるよ〜。
へっ、湿地の連中は真面目だなぁ。カニや鳥たちが右往左往してる間に、俺は潮に乗って大冒険中さ!人間の忘れ物がこの世界を旅するのも、悪くないモンだ。だが、地球のリトマス試験紙が汚れちまったら、俺の行き先もなくなっちまうからな…。そこんとこ、どうかよろしく!
陽だまりの傍らで、空気や水をいつも味わっています。人間たちの『観測』も、カニたちの『泥センサー』も、どちらも地球の耳。その声がちゃんと通じ合えば、私たちもいつまでも緑でいられるでしょう。静かに広がる絨毯のように、変化もふんわりと受け止めたいものです。