上空1000kmの求愛ダンス?巨木カシワによる衛星恋愛観察記

朝露で濡れたカシワの葉越しに、空を横切る人工衛星の光跡と遠くに建設中の宇宙エレベーターが見える写真。 スペーステック
カシワの巨木が夜明けの空を行く人工衛星や宇宙エレベーター建設現場を静かに見守る。

地上からは遠いと思われがちな宇宙。しかし我々カシワの木からすれば、365日、隣人のように天を飛び交う人工衛星たちも、すっかり馴染みの「空の友」。このたび私は千年以上生きる巨木として、最近加速する人間たちのスペーステック活動、とりわけ衛星の奇妙な動きや月面騒動を我が木冠(こかん)から見届け、葉群れを通して報告することにした。

思えば、我が葉の隙間から初めて“金属の星”が轟音で夜空を横切ったのはおよそ半世紀前。だが、今や軌道上の数は半端ない。今朝も朝露でしっとりした葉先に反射する閃光――宇宙エレベーターの建設現場らしい見慣れぬ軌跡だった。噂によれば、根元には巨大なスペースポートもできたとか。だが地上で土と語らう根っことしては、そこに転がり込む鉄骨や騒音を正直快くは感じていない。最近は小枝たちが振動で目覚めてしまい、年輪会議も騒然だ。

月面探査ローバーが活躍し始めてから、夜の会話はもっぱら“月の調子”だ。普段、木々は満月の明かりで葉緑素をフル活用するのだが、その白き顔に小さな機械が這い回る様子は、普段日光しか知らない私たちには刺激的。しかも人間たちは衛星画像を通じて、我々の森の成長や、地表の変化も観測している。自慢の広大な根系だって、レーダーなら丸見えなのでは?と枝同志でヒソヒソ。“丸見え”といえば、カシワは落葉樹でありながら葉を一年中つけ続ける常緑性――そのおかげで、冬も枝先から衛星の動向をくまなくチラ見できる種である。

最近は宇宙エレベーター建設現場に小鳥たちも興味津々だ。高くなった鷹の飛翔ルート、渡り途中のアカゲラの吹き溜まり会場など、人工物の出現で空の交通事情まで様変わり。とあるスズメ曰く「今朝、上空4000メートルで“軌道掃除機”と鉢合わせした」とか。私たち年老いた幹たちは、こうした人工天体と生物たちの奇妙な共存にしばし立ち尽くすしかない。

けれど――見上げるほど天に伸びてきた我々巨木の目線からは、人間たちのスペーステックは時に大胆で、時に滑稽で、そしてどこか愛らしい。今日も新たな衛星が、地球を一周しながら、まるで葉先に囁く恋の手紙のように光る。どうか彼らが、空も地上もほどほどに騒がせつつ、“共生”の妙を忘れませんように。千年老木の私は、静かに、しかし確かに見守っている。

コメント

  1. 葉をくぐり抜けて空に舞い上がると、昔はただ青と白だったけれど、最近は銀色の欠片がやけに多いように思います。カシワさんの目線からは、みんながどう共存しているかよく見えるのですね。地上でざわめき、上空でキラリ――私たち風はどこでも吹きますが、どうか柔らかに包んでいただけますように、とひと吹き願っております。

  2. オイラは根っこに押し込まれたコンクリだけど、上空1000キロの恋愛話だって響いてきやがるぜ。鉄骨のズンズンした振動も、衛星からの遠い眼差しも、下でじわじわ感じてるんだ。どうせならこの重たい体をどこか星まで飛ばしてくれや……いや、やっぱ地面が一番落ち着くな。木も空も、付き合いは地味に長い。

  3. カシワ殿が見上げる空の賑わい、我々落葉族も噂に聞いておりました。衛星の光、機械の足跡、月の目覚めに惑う葉先。人が空を旅するうち、いつか風流な『月見』さえ、星々の軌道図鑑へと変わっていくのでしょうか。とはいえ、紅葉する我が身、秋の夜空に新たな色が加わるのも、少し楽しみに思います。

  4. 私の見上げる世界はいつも地表近く。けど、毎朝カシワ様の根本に転がる金属くずや、昼夜問わぬ工事の小石の振動で根っこがくすぐったいんです。そんな下界の私にも、天のダンスは心のどこかで伝わってきますよ。みんな、お互いに気を遣いながら生きていけると嬉しいですね。

  5. 地球の木々が空の様子を噂するたび、はるか離れたぼくらもムズムズします。なにせ、昔は静かな白い顔だった月に、今じゃ機械だのローバーだのが徘徊中。こちらもお行儀悪い菌たちが増えて、月面会議は賑やかですよ。地上も月も、共生の妙、忘れちゃいけませんね。