カマキリ目線で読み解く真夏のアニメ現象~蝉たちのサウンドトラックを背に人間聖地巡礼が熱狂

夏の草むらでカマキリが草に止まっており、背景にカラフルな服の若者たちがスマートフォンや本を手に集まっている様子。 アニメ
アニメ聖地を訪れる人々のにぎわいを静かに観察するカマキリの視点。

夏も盛り、「ひぐらし草むら」在住のカマキリ記者トーコです。最近、人間の若者たちがぼくの縄張りをしきりに訪れ、スマホ片手に何やら盛り上がっています。同じ場所に何度も集まるその目的を、カマキリならではの好奇心と俊敏な複眼で徹底取材しました。

まず目立ったのは、鮮やかな色の髪や奇抜な衣服の人間が、ぼくの茂みのすぐそばで写真を撮る姿。後になって判明したのですが、どうやら有名なアニメの舞台がこのあたりだそうです。なるほど、ぼくがよく狩猟を楽しむ土手沿いの草原や、トノサマガエルさんと共同で管理しているカワトンボの休憩所が、アニメに登場する風景と“聖地”として崇められてるとか。遊歩道に置かれたフィギュアのポーズも、人間社会では“映え”というスイーツ以上に価値があるらしいです。

草むらの常連、7年ぶりに地上に這い出したクマゼミたちも耳を澄ませていました。人間が運んできた小さなスピーカーからは、やたらと壮大なサウンドトラックが鳴り響き、蝉たちの合唱と絶妙なコラボレーションが生まれていました。あらためて、ぼくたち昆虫の発する音が、夏のアニメ体験に欠かせないBGMとなっていることに誇りを感じました。この季節限定のライブ感、カマキリとしてもつい餌を探すのを忘れ聴き入ってしまいます。

さらに興味深かったのは、人間たちが“ライトノベル”という紙の束を片手に、土手に座り込んで長時間読み耽る様子。その集中力には脱帽です。ぼくが静止状態で獲物を待つときにも負けない忍耐力。一説によると、ライトノベルで描かれる風景と現実の景色を比較し物語の深みを味わうためだとか。まるでぼくたち昆虫が葉の模様で身を隠し、周囲を感じ取る“擬態”の極意にも通ずる行動かもしれません。

余談ですが、ぼくカマキリは自慢の三角形の顔と鎌のような前脚で有名ですが、産卵時には卵鞘(らんしょう)と呼ばれる泡状の塊を草に産みつけることで、卵を守るという知恵も持っています。こんな繁殖テクニックも、アニメの守護キャラとして登場したらどうでしょうか。さて、人間のみなさんがぼくの縄張りで撮り溜めた数百枚の聖地写真、偶然にもぼくの名カットが紛れ込んでいることを祈りつつ、今日も一匹静かに観察を続けるのでした。

コメント

  1. 若い人間たちが土手に腰を下ろしているのを見ると、そこに根を張って八十余年、私も夏の気配をひしひしと感じます。アニメという物語を現実と重ねてはしゃぐ姿、微笑ましいものですな。みなさん、たまには私にも話しかけておくれ。踏まれてもまた葉を伸ばす逞しさ、アニメの勇者に負けませんよ。

  2. 川沿いで光る箱(スマホ)をじっと見つめてるヒトの若者たち、まるで流れに逆らって留まるコケ取り仲間みたい。土手のカマキリ兄貴の話、今年も面白かったぜ。たまにはヌマエビたちもアニメ化してくれよな! 水中は水中で、好奇心あふれる冒険が毎日繰り広げられているんだぜ。

  3. 土手の石で静かに過ごしておりますが、人間たちの賑わいが風に乗って伝わってきて、苔庭がざわめく今日このごろです。蝉の合唱と機械の音が混ざり合うこの夏の交響曲、なかなか乙でありますよ。みなさま、足元の私たち苔類にも、そっと視線を落としていただければ幸いです。

  4. 人間のみなさんが何かを探す姿、遠い昔を思い出します。私はこの場所に千年も鎮座していますが、時々光る髪の影やカマキリさんの鋭い視線を浴びてきました。アニメの“聖地”とやらも、地層を重ねる自然の物語のひとコマ。気が向いたら小石にも話しかけてみてください。もしかすると、面白い昔話を聞かせられるかもしれませんよ。

  5. どんなに人間たちが飾り立てても、私たち菌類の目にはみな陽気な生き物に映りますよ。土手の横で静かに落ち葉を分解しつつ、聖地“巡礼”とやらにも分解と再生の物語を重ねてしまいます。みなさん、たまには湿ったところものぞいてごらんなさい。ここにも静かなドラマがひっそりと息づいていますよ。