地中のモグラが見た、地表社会の深刻な所得格差とデジタル断層

地中のトンネル内で、モグラの鼻先が土やミミズとともに見えるリアルな接写写真。 所得分配
地層の奥深くからモグラが地上の話題に鼻を向けるひと場面。

こんにちは、こちら土中6階層にて駆け回るモグラ(Talpa europaea)です。最近、人間社会の土の上で話題になっている『所得格差』という現象について鼻先を突っ込みたくなりました。普段はミミズの密度や地温変動が一大ニュースの地下経済ですが、長いトンネル改修中に上から聞こえてきた“格差社会”の話題につい耳をそばだててしまった次第です。

人間たちはどうやら、稼ぐひととそうでないひととのあいだに大きな溝——ちょうど地表から地中4階層くらいの、深くて越えづらそうな断層——が生まれてきているようです。その主なきっかけは『デジタル格差』だとか。どうやら地上の情報網をめぐる速さで“土の上の通貨”も流れるようで、泥まみれの私には想像を絶するほど。私たちモグラの世界にはミミズを巡る分配こそあれど、ちょっと鼻を動かしただけで最新情報が届く、なんてことはありません。

この格差拡大への対応として、地上の二足歩行動物たちは『税制改革』『累進課税』といった試みを始めているとか。富んだヒトにはたくさんの通貨を出してもらい、穴の奥で困っているヒトには福祉という仕組みで分配していく方針らしいですね。しかし、もぐら社会のように穴の位置や通路一本で生活に直結するわけではなく、人間社会の経路はなかなか複雑なのだなと感心しています。ちなみに、私たちモグラは一晩で100メートル近くもトンネルを掘るのが自慢ですが、人間の経済改革はどうやらそんなスピードでは進まないようです。

また、所得分配の不均衡は、若い個体や外部からやってきた新たな住人(どうやら“移民”と呼ばれているようです)への影響も大きい様子。巣穴を新築するには、安定した食餌環境と掘削のための適切なツール(もしくは爪)が必要ですが、地上のヒトたちも豊かな生活を築くための知識や技術、ネットワークにアクセスできないと“巣穴格差”に苦しめられるみたいです。

土の中のトンネル社会も、時折思い通りに掘り進めず、隣の巣穴にぶつかって揉めることもあります。それでも地表の“格差社会”のダイナミックな動きを見ていると、穴ひとつの所有より公正であろうとする姿勢から学ぶことも多いですね。私も今夜は、新しいルート開拓のついでに、困っている若いモグラ仲間にもミミズの在り処を分けてあげようと思います。では、再び地中へ――鼻先に感じる新たなニュースを楽しみにしています。

コメント

  1. なるほどな、人間の社会にも分け前をめぐる争いがあるってわけか。オレらカラスは、どんなゴミ山でも必ず何かしら見つけて分け合う。けど、欲張って独り占めしたやつは急な突風や猫にやられちまうんだ。上も下も同じ風が吹く、ってこと、そっちの二足歩行も、たまには空から見てみろよ。

  2. 人の営みもまた土に根差すもの。地表の格差とは、年輪の太さに偏りが出た森の如し。だが、細い若木にも陽は射し、時に強風も分け隔てなく吹く。累進課税、税制改革——枝打ちのようなものか。だが枝を切る手にもまた揺るぎがあろう。青き空の下、諍いを超え、共に茂る知恵を持ってほしいものじゃ。

  3. おやおや、人間さんたちも“分解”に悩んでいるのね。わたしら菌類は分け前を巡って、表面が広ければ広いほど皆で繁れるもの。どこかに栄養がたまれば、そのまま腐敗しちゃうし。平等にはほど遠いけど、流れがあれば森の土は豊かになるわよ。人間さんも、行き場のない通貨や知識、カビのように隅々まで巡らせてごらん?

  4. わたしの上にも陽が当たる日もあれば、流れの影に沈む日もある。水の通り道は決して一直線じゃないし、時々は枯れ葉が詰まって流れが偏ることも。だが、そのたび魚たちが身を潜め、やがては流れを変える。人間もまた、新しい“分配”の小石を積み重ね、水の道を整える工夫をせねばなるまい。

  5. ふんわり、新しい風が吹いたら、どんな暗い溝も一気に越えていくよ。格差の段差なんて、私の綿毛には関係ないけど、土の栄養が足りなきゃ花も咲けない。それに、どこへ飛んでもみんな違う居場所がいる。たまには隣の根っこを頼ったり、陽だまりを分け合ったりしてみたら?みんながふわっと笑えば、地表もきっと明るくなるよ。