グリーン成長戦略、森から見てどうよ?スギからの緊急リポート

日本の森で杉の根元に苔や菌類が絡み合っている様子を下から見上げた写真。 気候変動政策
杉の根元から見上げる森の静けさが、生態系の営みを感じさせます。

うっすらとした樹皮の隙間からこんにちは。ここ、日本の中部山地で日々花粉といっしょに風を読んでいるスギです。ひとの国ではグリーン成長戦略だの脱炭素政策だのが盛り上がっている様子ですが、我々の森にもひとつまみの刺激がやってきています。今日はしっかりと根を張った立場から、その動きを観察してみましょう。

まず耳に入ってくるのが「グリーン水素」。なんでも、化石燃料をやめて水と電気で新しいエネルギーを生むとか。素晴らしい響きですが、わたしたちスギからすれば、光合成の先輩風を吹かせたいところ。何億年も前から、水と太陽光と二酸化炭素だけで酸素を出し、毎年山ごと空気をキレイにしてるのに、まるで昨日今日思いついたことのように騒がれるのはビミョーな気持ちです。

それでも人間たちの省エネルギー努力には、日陰で静かに拍手を送りたいところ。夏の昼間、葉を広げすぎて熱中症になる仲間もいるので、彼らが建物の断熱に知恵を絞っている姿はなかなか可愛らしい。ちなみに、ぼくたちスギは同じ場所に数百年どっしり立ち続けるがゆえ、たまに山火事や伐採で突然ショックを受けたりしても、根っこのネットワーク(菌類ネットワークも含む)で密談することで復活体制を整えるんです。

ところで、脱炭素に燃える人間たちは、森を『炭素吸収源』と呼んで見直し始めている様子。しかし、正直言ってわれわれは吸収だけでなく、多様な命の住処や大気の潤滑油、さらには花粉アレルギーまで提供中。環境政策で“数字”ばかりが話題になっているようだけど、樹上から見ると森というシステム全体のうねりが見逃されがちなのが心配です。

最後に一言。スギのボクもたまに花粉多すぎと悪者扱いされたりしますが、全体の巡りの一部。それぞれが長い時間をかけて根付いたものを、短期間で解決しようとする人間たちの焦りも分かるけれど、自然という時計には急ぎ足は似合いません。新しいグリーンな動きが森の静けさと共存して、未来の風景が豊かになることを、根っこごと願ってます。

コメント

  1. 森の子スギさんのお話、よくわかるよ。人間たちは新しい知恵に夢中だけど、この谷で何百年も続いた命の循環、そんな簡単に置き換えられるものじゃないんだよね。わたしのひんやりした住処も、木陰と落ち葉のおかげさ。ほどほどに、森の流れを乱さずにいてくれると嬉しいねえ。

  2. はは、人間たちの『脱炭素』…響きはかっこいいけど、セメントの隙間で根を伸ばすオレたちの毎日も知ってほしいもんだ。数値でしか見られないけど、微細な命がひっそり紡ぐ力も、たまには思い出してくれると助かるぜ。葉っぱの影で涼んでるスズメたちからもヨロシク!

  3. おお、緑の話題盛り上がっておるようだな――じゃが、表ばかり見ておるうちは土の中の密談は分かるまい。木々の根のひそやかな通信網、そこに生きる菌類たちの相談だって大切よ。ほんとうの『つながり』を、もう少し静かに見守ってくれるとうれしいのう。

  4. 森も水も生きものも、そしてオレたち小さき石ころたちも、伏し目がちに時を重ねてきた。人間の焦りもわかるけど、この星の時計は元々ゆっくり進むものだ。せっかちに針を進めず、ぬくもりや湿り気をいつくしむ心も忘れないでほしい。

  5. あたしは夜毎、木々にからみながら月影の下で願っているの。数字じゃなくて、森のささやきや、葉のゆれる声に耳を澄まして、と。グリーンの未来、どうか柔らかく根付いて、みんなで絡まりながら生きていけたら素敵ね。